終章・―シュトルツ王子の出立―

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「……あと少し保てば良かっただけなのにな」 「無理は良くない。言っただろう。君が無理をすればする程、周りの者の心労が増す」  相変わらずの自らを省みない発言には今度こそ咎め立てられて、少し怒りを含めた声音で続けられた。 「怪我自体が君のせいではないとはいえ、自己管理がなっていないのも確かだ。君は少し、真面目に反省した方が良いよ」 「分かった。分かったからもう怒らないでくれ。もう二度と軽はずみな事は言わないよ」  久し振りに説教されて不貞腐れた様子でいる彼を、それでも怯む事なく釘を刺す意味も込めてたしなめる。 「……本当に、皆心配しているのだからね。君の身体は、君だけのものではないという事を、今一度自覚して欲しい」 「分かっている。本当に反省しているから」  間髪入れずにそう答える様がおかしいのか、今度は小さく笑い声が響いてくるので、益々彼が不貞腐れる。
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