終章・―シュトルツ王子の出立―

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 からかわれていると理解して、気に入らないようにわざとらしく頭からシーツをかぶると、完全に拗ねてしまったのかそれ以降は何も喋らなくなってしまった。 「まぁまぁ、落ち着いて。……君は良くやったよ。これからしばらくは怪我が治るまで、ここでゆっくりと眠ると良い。……後の事は私に任せておきなさい」  闇の中で優しく響く声に彼が無言で頷くと、それ以降は沈黙が返ってくるだけだった。  そう断言したからには、なるべく負担をかけないよう人払いもしてくれているのだろうと、珍しく療養に専念出来る配慮に感謝する。  解決するまで本当に大変な毎日であったが、今はもう何を考える事もしなくて良いのだと、シーツの端を掴みゆっくりと寝返りをうって一息吐いた。  静かになった寝室の中で目をとじると、彼の意識はまどろみの中へと落ちていった。
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