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「入りなさい」
すぐさま中から声が響くので、彼は間を置かずに謁見の間に入ると一礼してから口をひらいた。
「ガンダル王、私を呼び出した御用件は」
低く、それでいて良く通る声をしている。
窓辺に立っていたガンダル王もその声を聞くと振り返り、いつも彼に見せる苦い顔をした。
そうして小さくため息を吐くと、彼が放った問いに応える。
「……いつものように、あまり良い知らせではないのだ」
「分かっております」
遠慮勝ちな声でそう言うガンダル王に対して今更何をと返す代わりに、彼はいつもとは違う、非常に素っ気ない態度を取る。
そう……。全てを察しているからこそ彼はこの謁見の間に入る事を躊躇していたのだ。
だが、仮にも国王が持ってくる難題を、気乗りしないからと放り出してしまう訳にもいかない。
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