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「……それは、もしかしなくともシュトルツ王子がこの国を訪問する、という事なのですね」
出来ればあまり実現して欲しくはない、考え得る限りで最悪の質問に小さく頷くガンダル王を前に、途端に彼は頭を抱えてしまう。
「済まない、カイル。断れなかったのだ」
ガンダル王がシュトルツからの要請を断りきれなかったように、彼にもまた用件を断る術などないが、それでも悪あがきをしたいのか、それとも時間稼ぎをしたいのか、頭を抱える体勢は一切崩さずに呟いた。
「……それでガンダル王、この事はティリス姫には?」
「いや、まだ娘にも、ケイトにも言ってはおらん。カイル、この事はシュトルツ王子がこの国を訪問してくるまで、二人には秘密にしてくれ」
彼は無言で頷くと、背すじを正してから一礼し、謁見の間を後にした。
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