【時は流れて】

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学校を辞め、毎日ショップで働くようになってから2回目の夏が巡ってくる。 僕も今年23になってしまった… 何度か店長に社員にならないか?と聞かれてはいたが… なんとなく断り続けていた。 まだ自分に社員としての自覚というか責任が持てない気がしたからである… 幸樹は異動してこの店には居なかったが… たまに顔を見せに来てくれる。 僕の中では何も変わらない毎日を今も続けていた。 いつものように朝から晩まで働いて仕事を終えると僕は久々に孝太と会う約束をしていた。 ショップのあるファッションビルを出るといつもの待ち合わせ場所へと急いだ。 喫茶「果梨」 どことなく懐かしさが漂う喫茶店。 何時かのデートの時、二人で入ってから、その独特の雰囲気と流れるゆったりとした空気に僕たちは引き込まれ… いつの間にか定番の待ち合わせ場所となったのだ。 ~カランカラン♪~ ドアを開けるといつもの大きな鐘の音が僕を迎え入れてくれた。 落ち着いた店内。 いつものマスターはカウンターで新聞を読んでいる。 僕の来店に気づいたのかこっちを見るとにこやかに微笑んでくれた。 「いらっしゃい!今日も待ち合わせかい?」 温厚そうなマスターは僕に優しくたずねてくる。 「はい。今日も橘くんと待ち合わせなんです。」 「そうか、2人とも仲がいいね!いつものでいいのかな?」 マスターは気さくに話しながら注文を聞いてくる。 いつのまにか僕も喫茶「果梨」の馴染み客になっていた。 店内に僕以外のお客さんはおらず… 孝太はまだ来ていないようだ。 「あっ、いつものお願いします。」 僕はマスターにそう頼むと店の奥にあるテーブルへと足を運んだ。 暫くしてマスターがあったかいウィンナーコーヒーを運んできてくれる。 木のぬくもりを存分に味わえるログハウス風の店内。 カントリーグッズが程よく並べられている。 とってもあったかい感じだ。 流れている曲もゆったりとした曲調のカントリーミュージック。 なにもかもがゆったりと僕を包んでくれているようで優しかった。 熱いコーヒーの上でとろける生クリームのように僕はまったりと流れる時間を楽しんでいた。
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