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咲ママの呼び出しで僕は歓楽街に出ていた。
仕事場が近所なのもあり…
最近、この歓楽街へ出てくる回数もたぶん増えてると思う。
時間が合えば孝太とも飲みに出ていたが…
最近、就職活動で忙しい孝太とは一緒に来る事は少なかった。
ただ、一人でもこの歓楽街にいると少なからず自分と似た境遇の人間に会える。
それが心地良かったのだ。
高校生の時とは違い『ゲイ』であることを絶対に知られてはいけないって気持ちは薄くなっていたが…
自分が必要に駆られるか…
誰かに聞かれるか…
それ以外で話す必要がない事も今までの経験上、わかっているつもりだった。
まぁ、聞かれても相手によってはごまかすし…
その辺はケース・バイ・ケースだ。
専門学校を辞めてからカミングアウトをした人間が何人かいる。
反応は様々で…
・あからさま気持ちが悪いと拒否する人間。
・冗談なんだろ?と笑う人間。
・いつか治ると思っている人間。
・何も言わない人間。
・何も変わらない人間。
・今まで異常に仲良くなる人間。
色んな反応が見れた。
ただ、最終的に否定派と肯定派に分かれる事に違いはないのだが…
カミングアウトと言う篩いにかける事で僕は周りの人間を少なからず選んでいた。もしかしたら学生時代よりも仲の深い有人や知人が増えたかもしれない。
そうしないと僕の安息は保たれなかったからである。
おかげで僕の何気ない日常もそれなりに賑やかなものになっていた。
子どもでもなく…
大人でもない…
夜になりかけの空。
『藍空』のような今…
僕は夜に近づく空のように大人への階段を着実に上り始める…
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