【普遍の地】

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仕事が終わり僕は久々に『reset』へ顔を出していた。 このお店は僕が高1の時、ひょんな事がきっかけで足を踏み入れたGayBarだ。 考えてみれば10年も通い続けている事になる。 10年前と比べると店の内装はほとんど変わっていないが… 明らか時の流れが店内のいたるところに見え隠れしている。 もちろん、従業員も10年前とは全く違う顔ぶれ… あの頃は僕より若い従業員なんていなかった。 なのに現在、ママを除く従業員は僕より若い。 ちょっと複雑な気持ちになる。 そう言えば… 最近、『reset』のママである咲さんが店のホームページを作り、お店のカウンターにはノートパソコンが置かれている。 そのノートパソコンを借りて僕は自分の持つサイトの掲示板を見ながらコメント返しの作業をしていた。 此処は家ではない、平日とは言え… 数組のお客さんが周りでたわいもない会話をしながら日頃の生活を忘れ酒の席を楽しんでいる。 此処なら… 過去の僕に縛られる事はない。 そう思ってはいたが… 思春期真っ只中の青春時代をすごした思い出深いこの店はそんな僕のあさはかな思いを見事打ち壊してくれた。 僕はまた過去の僕に誘われ… 徐々に僕の心を記憶が侵食していく…。 またもや今を生きる僕は過去の自分に囚われてしまう。 そして僕は… ちょっと切なくて、でもあたたかい僕の思い出たちの元へゆっくりとトリップしていくのだった。
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