フノカミ様

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――カコン! 高笑いをさえぎるように、陸は甲高い音を立てて缶を傍らに置いた。 「……ビンボーは嫌いですよ。悪いコト、だよ。 そうじゃないなら…… なぜ僕のウチはこんな不幸になっちまったんだよ!!」 ごうっ、と重たい音がして、頭上で風が渦巻いた。 灰色の空にポプラが舞い上がり、しばらく宙で踊っていた。 ―――隣には、フノカミの姿は無かった。 代わりに一匹、薄汚れた猫がベンチに座り、陸を見つめていた。 「よかろう。 では、ひとまず今日の食費を与えてやろう。 ワシについてこい。 あの店に入るぞ。」 姿は無いが声はする。 辺りを見回して、そして気が付く。 ――――猫。 この猫が喋っている。
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