せどり入門編~大手古本販売チェーンで背取り~

3/7
163人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
「何する気だ? まさか本を売る気か? バッグの中のやつはダメだぞ。講義で使うのばっかりだから」 「違う。逆じゃ。 本を買いにきたのじゃ」 買いに………きた。 とっさに陸はデイバッグを下ろし、中にいるフノカミを引きずりだした。 「ふっざけんな! 買い物するヨユーなんか無えよ! 残金、108円しかないんだよ! ……てかお前、バッグの中でパン耳かじるな! カスが落ちるだろうが!」 フノカミはいたって涼しい顔で答えた。 「108円か。それなら十分じゃ。 せどり。 せどりをするのじゃよ。 この店は、105円で本が売られているであろう? ワシが選んだ105円本を買うのじゃ。 もしもそれが嫌だというなら…… ……ワシの正体を知った以上、ただではおかれぬな……」 フノカミの目が妖しく光を放った。 ニヤリと笑った口は驚くほど赤く、ことのほか鋭い牙がのぞいていた。 自販機を狂わせた“チカラ”が頭をよぎった。 「…わかったよ… 本は買うけど…… せどりって、何だ?」
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!