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―――せどり。
漢字では『背取り』と表記する。
『背』とは背表紙の事。つまりは本のタイトルを指す。
古本屋の店先を回り、めぼしい本の背表紙を見つけて棚から抜き取る。
だから縮めて『背取り』。
“めぼしい本”。いわゆるプレミア本。
値打ちがあるにも関わらず、気付かれず安く売られている本を見つけるのだ。
そうやって『背取り』した古本をどうするかと言うと、
別の古本屋に持ち込み買い取ってもらうのである。
自分が購入した額よりも転売した買い取り額が大きいと、利益になるというわけだ。
100円で買った古本が、500円、1000円、あるいは定価より高い値段が付けられることもある。
「わかったかね陸殿。それが、せどりじゃ。
こういう大手古本チェーンは、本の買い取り額が一律に決められている。
発売から間もない本は定価の3割とか、
何年も前に出た古い本は一律数十円とか。
本のもつ付加価値が評価されとらん。
だから、お宝本が眠っている可能性があるのじゃ。
さ、ワシの言うとおりに進むがよい。…マンガ本あたりがよいかの」
そう言ってフノカミはバッグの布越しに陸の背中を押した。
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