せどり入門編~大手古本販売チェーンで背取り~

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本を手にとってみた。 小さな文庫本。うっすら黄ばんで見えるのは、日焼けのせいだろう。 こんなのが、コレクターにとってはお宝なのか。 わからん。自分には理解できない……。 「ささ、早く精算を。 次に行く所がある」 フノカミの声に我に返る。 「そうだな、会計…いてっ」 いつの間にか足元には買い物カゴが置かれていた。 そうとは気付かず歩きだした為、思いきり足をぶつけてしまった。 カゴの主だろう。 横に立っていた男がジロリと陸を睨んだ。 「あ…スミマセン!カゴ、ぶつけてしまって」 「…いや、構わないけどさ。さっきからニャアニャア聞こえてるよ。 店の人に怒られるよ?」 そう言ってデイバッグを指差した。 猫の持ち込み、バレてる。 …ていうか。この人にはフノカミの声が、猫の鳴き声にしか聞こえないのか。 「そうじゃろう。 貧乏神に選ばれし者だけが、ワシの声を解せるのじゃよ」 フノカミが高らかに笑った。 「あーもう、静かにしてくれ! あ、あの、本当にごめんなさい!」 男に頭を下げて逃げるようにレジに向かう。 男は気にする様子もなく、ひたすら携帯電話を見つめていた。 手に取った本を携帯と見比べては、棚に戻し、あるいはカゴに放り込んでいった。
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