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あ、金、払えない。
…目覚めると、陸は真っ先にそう考えた。
白ずくめの部屋、見覚えの無いベッド、腕に繋がれた点滴。
目に飛び込んでくる異質な光景に、何となく状況が飲み込めてくる。
………どうやら自分は倒れ、病院に運ばれたらしい。
でも。
治療費無いんだけど……。
どうしよう…。それに、今何時なんだろう。
午後の講義はともかく、空のことがある。
空を、保育園に迎えに行かなきゃならない。
―――焦り始めた陸の耳に、慌ただしい足音が聞こえてきた。
カーテンが揺れたと同時に、勢い良く開け放たれた。
まだ若いナースがズカズカとベッドに近付いてくる。
「瀬鳥さーん、どーですかあー?目、覚めましたねー」
ぶっきらぼうに言いつつ、点滴をいじりはじめた。
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