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ある晩、おかしな夢を見た。
寂れたベンチに座っていると、目の前に銀色の猫が現れるのだ。
輝くほど美しい猫は一言、『世話になったな、ありがとう』そう言った。
いつものモップみたいな灰色猫の姿とは違うが、それは紛れもなくフノカミの声だった。
『すまぬな、陸殿。お前さんを利用してしまった。
国春を救いたくて、
お前さんと国春を引き合わせたのだ。
まだ幼いアヤツに、ワシのチカラを与えたばかりに…
ワシのせいで国春は、落ちてしまうところだったからの……
なんとしてでも救いたかったのだ』
銀色猫は、神妙に頭をさげた。
その姿を見るうち、フノカミが空を避けていた訳がわかった気がした。
こいつは国春の道を歪めたという負い目を抱え、そして空には、こいつの事を感知する素質がある様子だった。
こいつは、国春の二の舞をつくりたくなかったのだ。
――もう二度と、幼い子供にフノチカラを見せ付けてはいけない。――
そう思い、避けていたんじゃないだろうか。
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