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瀬鳥空にとって、兄と本屋にいくのは久しぶりのことだった。
―……ママがいるときは、よく行ってたのにな。
…そう思っても、口に出してはいけない気がした。
兄とつないだ手に力を入れてみる。
兄――…陸は、小さな指を包み込むように握り返してきた。
「着いた。結構家から近くにあったんだな……
鳳さんの店」
―――オオトリ古書店。
店構えこそ古めかしいが、
ピカピカに磨かれた窓や、そこに掛けられた深緑のベルベットのカーテンからは洗練された雰囲気が感じられた。
「いらっしゃい。瀬鳥くん、空くん。」
店に入ると、優しげな青年が迎えてくれた。
鳳 国春(オオトリクニハル)。
この店の店主である。
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