14人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
琥珀に諜報活動を任せ、東次郎は新撰組局長である近藤勇と非公式ではあるが会談を持っていた。
いや、この言い方はおかしかった。よくよく考えれば東次郎は公的な存在ではない。が、父・政宗が徳川に仕えた名残から心情は幕府に寄るし、一部の人間は東次郎の存在を知ってもいる。ただ東次郎は積極的に政治に参加することが無く、別に誰にとっても害のある存在ではない。
まあ伊達の本家は度々無心を受けているが、その額たるや微々たるものである。
東次郎は近藤とは初対面である。場は幕府から紀州に働きかけさせ設けさせた。
耳に蛸が出来るほど粗相の無いようにと聞かされたのであろう、近藤の周りの空気はたらふく汁を吸った大根宜しく重く、また固く尖っていた。
空気を和らげるのも面倒なのか東次郎は適当な変名を名乗り、すぐに核心を問う。
「中岡らをやったのはオメェさんたちかい?」
近藤の眼に変化は無く、胆力のある男だねぇと東次郎はキセルを取った。
最初のコメントを投稿しよう!