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「仲本様は我が新撰組の仕業とお考えで?」
仲本とは東次郎が名乗った変名である。中岡と坂本を安易にひっつけただけでこれと云って意味は無い。
「早よう答えい!」
東次郎は問いを問いで返されるのを殊更嫌がる癖があった。腹の探り合いは好きではない。そもそも二百年以上生きている東次郎はもはや妖怪サトリと渡り合えよう。上からどうこう言われようと、謎の男を探ろうと近藤が考えるのも当然と言えるのだが、東次郎の一喝に近藤はすぐに姿勢を正し、「当方にはございませぬ」と応えた。
嘘ではない、と東次郎は判断した。嘘を云う理由もまたない。が、一応の念押しに、近藤は「我等が手にあれば中岡某が二日も長らえる事はありますまい」と釈明した。
そりゃそーだ。
新撰組なら確実にとどめを刺そう。ではその方誰の仕業と考える?
「はっ。京都見廻り組かと」
「では」
と訪ねる。見廻り組であるならば何ゆえに名乗らぬのかと。
「わかりませぬ」
そりゃそうだろうなと東次郎も納得する。
「で、もう一つだけいいかい? 狙いは中岡か坂本か、或いは両方か?」
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