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「ご苦労さん、琥珀ちゃん。疲れた? ふ~ん。結衣は?」 「さあ…、茶屋で団子でも喰ろうてんのんちゃいますかね?」 「琥珀さあ」 「へぇ」 「お前、キャラ固まらんねえ」 「そのうち固まるでしょう。しかし結衣さんが来ない事には報告が…」 「ええよ、待ちがてらお前さんの話しを聞いておこう」  琥珀はすいと立ち上がり女将に樽を持ってくるよう指示した。 「樽でございますか?」 「ああ、ついでに中には酒を入れといてくれ」  カン  と、キセルが鉢を叩く。東次郎は慣れた所作で草を詰めながら「世間話でもするかい」と言った。 「まあ今更だがね、徳川幕府ってな家康のオッサンが初代なわけだあね」  いや、オッサンて…。伊達家がそんなんいいなや、と思えども、東次郎は家康公と現実会った事があるのだから、まあええんかなぁとか琥珀は考えた。 「で、二百と四十年か。徳川幕府が統治していたわけだ」 「はい」 「ところがここに来て、幕府はガラガラと崩れ、言わば革命が成ろうとしているわけだ」 「…はい」  声を大にしては語れぬ話だが、東次郎が言う分には誰も咎めだて出来ない。 「何が問題だと思う?」 「何、とは?」 「幕府が倒れる理由さ」  琥珀は一瞬固まった。──幕府が、倒れる?  いや、確かに徳川家の統治は先の大政奉還により終わったのかも知れない。が、しかしやはり、幕府が無くなるわけではない。徳川幕府では無くなっただけで、帝の下に雄藩が集まり統治を…。 「つまり幕府は存続するがその中心は徳川ではないと?」  ──そうなるのだろうか?  いや、違う。 「そうだ琥珀。徳川でなければ幕府など必要無い。逆に幕府という世襲による絶対権力者を必要とする仕組みは害ですらある。無論、長は必要である。だがそれは、将軍ほどに権力を持たせてはならぬがな」  東次郎の一服に、天井の低い部屋に煙が漂う。 「すいません、目覚まし時計の電池が切れてて」  結衣が戸を開けた。
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