日常

2/4
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
 私は繁華街から少し外れたビジネス街にある居酒屋でアルバイトをしている。バイト先の居酒屋は母の勤める会社の目と鼻の先にあって、たいていは一緒に帰宅する。母が会社の近くに駐車場を借りているので、いつもそこで待ち合わせ。もう顔なじみとなった係員と、 「お母さん、まだ?」 「もうすぐ来るって連絡があったよ。」 「じゃ、待ってる。」 こんなやり取りをするのも慣れたもの。夜間は学生アルバイトが係員をしているので、私は気軽に声をかける。 「遥ちゃん、大学は?」とパネルを操作しながら係員のシュウ君が話しかけてきた。 「もう週に一回だけだから。」 4回生になるとほとんど単位も修得しているから、週に一度所属するゼミと、その曜日に合わせて二つ授業をとっているだけ。 「シュウ君は?」 「俺はまだ3回生だから、毎日学校行ってるよ。」 「単位大丈夫そう?」 「聞かないでよ。」と顔を背ける。ゴーと音がして立体駐車場の扉が開く。 車に乗り込み、道路に出そうとしていると大きな仕事用の鞄を持って歩いてくる母の姿が見えた。そのまま後部座席に母を乗せてシュウ君に声をかける。 「またね。」とお互い手を振り、車を出す。 「あんた、いつのまに仲良くなったのよ。」と母は勘繰ってきた。仲良くって、当たり障りのない話しかしてませんけど。本当、過保護。 「この前、母さんが車出しとけって言ってから2時間来なかったときにずっとしゃべってたからね。年も近いし、なんとなく話すくらいだよ。」と話すと、「そう。」と短い返事が返ってきた。何を心配してるんだか、末っ子はいつまで経っても子供扱いされるなぁ。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!