金曜日の夜

3/3
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
あの様子じゃ、休憩もとってないのかも。何か差し入れでも買っていくか。タバコとお茶、シュウ君にパンでも買おう。新人がいるって言ってたけど、見なかったな。ま、買っていくか。少しして駐車場に戻ると、混雑も引いていて、知らない男の人が立っている。 「お出ししますか?」と声をかけられる。 「あの、さっき出してくれるように頼んだんですけど。」と話していると道路からシュウ君が走ってきた。 「川崎さん、あと2台でこの人の車だから。」 私は端に置いてあるベンチに座って、シュウ君を呼ぶ。 「これ、差し入れ。甘いパンだけど。ねぇ、あの人が新人なの?」 「うわ、ありがとう。休憩とれなかったからおなか空いてたんだ。」と袋を開けながら、 「あの人、川崎さんっていうんだ。」 「へぇ。新人っていうから、若い子かと思ってた。結構年いってるよね?」 「本社の研修だってさ、35歳くらいじゃないかな。」 「ふーん。これ、川崎さんにひとつあげて。」と話していると当の川崎さんが呼びに来た。 「お待たせしました。」なかなかの長身。制服の半袖のポロシャツから腕が細く垂れている。 「ありがとうございます。」 とベンチから立ち上がろうとしたときに、川崎さんの腕に目が行った。視線を感じたのか、彼は慌てて袖口を押さえる。 「またね、シュウ君。」と車を出す。シュウ君はパンを食べながら手を振っていた。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!