第44章 ひた隠しにしてたもの

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結婚して約1年半が過ぎた。喧嘩もあったしいろいろあったが、猫のアスカと3人で穏やかな日々が訪れていた。 ただ1つ私には心に引っ掛かっていたものがあった。それは伸治の友人の滝澤さんという男性の存在だった。 滝澤さんは月に一度は伸治を訪ねてくるのだが、私が家にあがるように勧めても決してあがろうとはしない。そして伸治もまた家にあげたがらないのだ。 普通友人が訪ねてきたら家にあげてお茶でも飲みながら話したいと思うのだが、二人はいつも頑なにそれを拒むのだ。 (あの二人、何をコソコソしてるのかな・・・・・・・。) 私は疑問に感じながらも、男同士話したい事があるのかと思いほったらかしていた。 そんなある日、滝澤さんが家を訪ねてきた。 ちょうどその日は伸治は仕事でいなかった。 これを機会と私は滝澤さんに尋ねた。 「滝澤さん、いつも伸治と何をお話してるんですか?何か私がいるとまずい話なんですか?」 滝澤さんは一瞬顔色を変えて、押し黙ってしまった。そしてようやく重い口を開いた。 「実は奥さんが伸治君と知り合う前に、伸治君にお金を貸していてね・・・それの催促に来ていたんだよ。何しろ奥さんと知り合う前の話だから奥さんには関係も責任もないから、奥さんの前では話せなかったんだ。」 私はあまりのショックに言葉に詰まった。しかし真実を聞いた以上、何をかも把握しなければならないと思った。 「伸治は滝澤さんからいくらお借りしているんですか?この際ですから、正直におっしゃって下さい。」 「400万だよ・・・・・・・。」 それは伸治が破産した金額を遥か上回るものだった。 私は怒りに震えるのを抑えながら、こちらも正直に話そうと決心した。 「滝澤さん、実は伸治は昨年の9月に自己破産の免責を受けています。その時にあなたからも借りているとは一言も言っていませんでした。」
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