第44章 ひた隠しにしてたもの

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滝澤さんは目を伏せて、 「そうだったんだ・・・破産してたのか。そこまで借金があったなんて知らなかったよ。」 しばらく二人の間に沈黙が流れ、私が 「それで伸治はいくらかは滝澤さんにお返ししたんですか?」 滝澤さんは言いにくそうに 「それがのらりくらり言い訳ばかりして返してくれないんだよ。だからこうして訪ねて来ているんだ。」 私にはもはや何も言う言葉は見つからなかった。ようやく借金を破産という形で精算したのに、まだ個人からも多額に借金をしていたなんて夢にも思わなかったからだ。 滝澤さんが帰った後、私はしばらく放心状態だった。それをアスカが心配そうに見つめていた。 もう一度破産の申し立てはできても、個人からも借金を破産してしまったら滝澤さんには1円たりとも返せない。それでは好意で貸してくれた滝澤さんに申し訳が立たない。 かといって今の我が家の経済状況では、400万円もの借金を返済は不可能なのだ。その上伸治には知り合う前に滞納した国民健康保険料と県市民税が60万円あった。 私は何度か働きに出ようと思ったが、嫉妬深い伸治がそれを頑なに嫌がり面接さえ許さなかったのだ。だからこんな状態であったとしても、私に働かせるという事はしないだろう。 私は夕方実家に電話をして、父と話をした。 父は破産の頃から怒り心頭だったので、もはや父の我慢の限界は超えていた。 「今すぐ荷物まとめて帰ってこい、少しだけ荷物まとめてきたらあとは伸治に送らせる。」 「別居しろって言うの?アスカはどうするのよ?」 「猫を連れて来たいなら連れてこい、とにかく一度伸治とは別居して奴に頭を冷やさせる。もう俺は我慢できないんだよ!!」 父は私と同じ一本気な性格なので、一度口にした事は決して曲げないのは私が一番わかっていた。 そこで簡単に荷物をまとめて、置き手紙を残して私はアスカを連れて実家に帰ったのである。
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