第45章 上司4人との論戦

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リーダーと私達が会議室で待っていると、専務と部長そして課長が入ってきた。 私が 「家内でございます。この度は主人がご心配をお掛けし、申し訳ございません。」 と頭を下げた。すると50代後半と思われる専務が、 「奥さんにまでおいで頂き恐縮です。それで具合はどうなんだ?」 と伸治に尋ねた。 「痛くて眠れなかったんですよ、一応湿布したりはしたんですが。」 するとリーダーが 「病院では全治2週間、最低10日は安静との診断でした。骨折はありません。」 と報告した。 専務はしばらく考え込むと口を開いた。 「明日から事務作業でいいから出られるか?」 と言った。伸治は 「でも痛くて仕事にならないし・・・・・・・。」 すると専務は 「君に無理はさせないよ、だから明日から来てくれ。」 これは労災にしたくないという専務の魂胆が見え見えだった。 「ちょっと、よろしいですか?」 私が口を挟んだ。専務は少し驚いたように 「はい、どうしました?」 「主人は10日の安静という診断書を頂いています。その人間に事務作業とはいえ仕事をさせようとする理由は何ですか?」 専務達は顔を見合せ、答えに詰まっていた。 そこで私は核心をついた。 「あなた方は労災にしたくないという意図で、主人に出勤を促しているのではありませんか?」 私の父はプレス作業をする会社にいた頃安全委員をしており、労災についていろいろ聞かされていた。 そして私もまた派遣でシフトリーダーをしていた時に安全委員をしていたので、労災に対する知識を持っていたのだ。 私は畳み掛けるように話を続けた。 「主人が4日間以上休むと労災申請をして、労働基準監督署に認定をしてもらわないといけない。それがあなた方にとって不都合なのではありませんか?」 「いや、それはですね・・・・・・・。」 専務は口ごもり、他の上司は黙り込んだ。 「労災認定には現場検証をしないとならない。今回主人にあなた方は通常使用しない梯子を使わせて作業させて事故が起こった、それを労働基準監督署に突かれて会社が責められるのを恐れているんでしょ?」 専務達の顔色が一変した。
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