24人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
夢を見た。
目の前で、振り子のように懐中時計が揺れている。融けて糸を引くかのように銀色の残像が広がる。
その時計の秒針は、よく見れば逆回っていた。
カチ、カチ、カチ……
ゆったりと揺れる懐中時計に合わせ、奇妙にゆっくりと秒針が回る。催眠術のように、その音と動きに集中すればしようとする程意識が霞んでくる。
カチ、カチ、カチ……
次第にどこからともなく赤い靄が立ち込め、時計が見えなくなっていく。
カチ、カチ、…チ、……、……
それと同時に音も段々遠ざかり、ついに視界が赤一色に染まったあたりで、私の意識は眠るように消えた。
最初のコメントを投稿しよう!