桐の箱

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汽笛が辺りに鳴り響く。 もうそろそろ出発するのであろう。 辺りを見回せば見送る家族は別れを惜しむ者などいない。 皆両手を上げて万歳の形をとっていた。 そんな人達の先には、 黄緑色と緑がごっちゃになったような… ーーーそう、変に例えていうならばお茶のような渋い色をした隊服を着込んだ男性達は 皆似たりよったりで決まって敬礼を最後にしている。 私の見つめる先にも、同じ服で、敬礼をしている人がいる。 私は男性に近寄り、小さく彼に言った。 "帰ってきたら、あなたに言いたいことがあります。" (今はまだ、言えないケド。) そう私が伝えると、彼は僅かに顔を哀しみに染めたが、それは一瞬の事で、私と他の人々は誰も気付かなかった。
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