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「ミルク、ちょーだい。」
「はぁ?」
俺がどうやってこの場を立ち去るか考えていると、予測を遥かに越えた台詞が耳を貫き思わず間抜けな声を漏らしてしまった。
奴は銀色に光る顔でニコニコとした笑みを作り上げ手を出してきた。
「何でミルク…あぁ、それの?」
突然欲しがる物に疑問が浮かび上がるも、奴の腕の中にいた仔猫が一鳴きした事に直ぐに納得がいった。
「おっ金ぇ~。足りないのぉ。」
奴は慣れた様子で仔猫を肩へ乗せ、血まみれのGパンのポケットから財布を取り出し中身を見せてくる。
財布は小銭入れで、中には小さなコインがチラホラ。
この額ではきっと子供向けの安いスナック菓子一つ買えるか買えないかである。
「………買って来てやるからココにいろ。」
早く奴から離れたい気持ちっ奴を人目にさらけ出したくない気持ちでそう言った。
奴は俺の言葉を信用したのかコクリと頷く。
容姿とかけ離れた仕草に拍子抜けし思わずフッと微笑んでしまった。
俺はハッと我に返ると止めていた足を動かす。
奴は引き留める事はせずじっと俺を見ていた気がする。
俺はミルク等買うつもりは全くなかった為真っ直ぐ帰路へ。
家へ帰る途中ふと奴が頭に浮かび上がってきた。
腐っている様であのギラギラと愛くるしい瞳。
例にするなら
口元を血まみれにしたライオンがウトウト眠りにつこうとしているような、
怖く可愛い物。
なんとなく好みな瞳だと思った。
それでも奴にミルクを買ってやる義理等見付からず俺は家へ帰っていった。
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