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「前にぃ~、すれちがったよねぇ~ん。」
そのまま素通りをしようとしたが奴はそんな俺の態度を気にせずのんびりとした声が耳に響く。
奴とすれ違う。も何故か足が止まってしまった。
面倒な事になってしまった…。
「さぁ?…見間違えだろ。」
早く立ち去りたく俺は少し奴に振り向き答えた。
のが不味かった。
振り向くと目の前に奴がいた。
視線のみで悪ガキの山を見ると奴はいなかった。
瞬間移動でもしたのではないかと思わせる奴の移動に俺は言葉を無くしてしまった。
「な…」
「んーん。間違えない。絶対アンタァ~。」
だって前と同じ嫌な顔してないもん。と甘える様な声色で奴は耳元で囁く。
奴からは血と石鹸の匂いが放たれていた。
俺は今までかいだ事のない匂いに吐気を覚え、一歩後退った。
「………面倒なのは嫌いなんでな」
嫌な事があっても嫌な顔はしない。
サービス業の基本中の基本。
それが今あだとなろうとは。
完璧主義な俺を俺は呪いたくなった。
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