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冬真っ盛りの時期、気温はこの年一番の寒さを記録しているのではないかと言うほど低く、見上げる空も今にでも降りそうなほど曇っていた。
そんな中、とある公園に一組の男女がいた。
1人は佇み、1人は公園のベンチに座り俯いている。
「これ飲めば?温まるからさ」
そう言って佇んでいた!人である彼は、ベンチに座って俯いている彼女の目の前に缶コーヒーを差し出した。
まだ買ってきたばかりなのだろう、冬の寒さの中でそれは人肌以上の熱を帯びているように感じる。
しかし女はそれを受け取ろうとはせず、ただ俯いていた。
「なぁ、なんで君は泣いてんの?」
「…………」
彼は声をかけるが彼女からの返答はない。
そんな彼女を見て、彼は内心ナンパに思われたか?と考え、ここにいることが気まずくなっていた。
「ごめん、言いたくないなら言わなくていいから。邪魔したな」
数分の沈黙の後、さすがに限界になったのか、彼は彼女の横に缶コーヒーを置くと、その場を去ろうと踵を返した。
「……ふられたんだ……」
「……え?」
が、帰ろうとしたとたん、急に彼女が話をしだしたものだから、一瞬なんのことかわからず、彼は素っ頓狂な声をあげて聞き返してしまった。しかし、少し考えた後、あぁ、涙の理由か。と思い当たり、すぐに納得した。
そして、体を再度彼女へと向け、これは正直少し重い話になるな。と覚悟して彼は耳を傾けた。
「はは、笑えるよ。『お前は俺より仕事のほうが大事なんだろ?』とか言うから、どっちも大事だ。って言ったら、『仕事と付き合えば?』だってさ」
彼はそう言って自分を蔑むように笑う彼女をただただ無言で見ていた。
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