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「もともとは向こうから付き合おう、って言ってきたんだから私自身がそんな傷つくことはないはずなのにな。あはは……」
薄い笑いを浮かべてはいるものの、彼女のその頬には涙がつたっていた。
「……でも、あんたは泣いてるじゃないかよ」
「っ!そ、それは……」
彼の言葉に彼女はドキッとして直ぐ様言い返そうとしたが何も思い浮かばず、口籠もってしまった。
「……好きだったんじゃないのか?それでいいじゃん。それに……泣きたいときは声出して思いっきり泣いたら?」
彼はよっと、という掛け声とともに彼女の横に腰掛けると、彼女の方をむいて優しく笑いながらそう言う。
しかし彼女は、さすがにこんなところで、という気持ちもあるのだろう、で、でも……、と口籠もりながら戸惑っていた。
「ご都合主義的にどうやらここには俺とあんたしかいないみたいなんだよな~。
しかも俺はこう見えて口は堅いほうだし、不思議と耳もたまにだが急に聞こえなくなるんだよな~、それが多分今だわ。
……こんだけ好条件はなかなかないよな?……あぁ、見られたくないなら俺は消えるが?」
彼は一気にまくしたてるように言うとニヤリとした笑みを彼女にむけ、ベンチから立ち上がって彼女から背を向けた。
「……ふふ、なんともご都合主義なことだな……すまないが、居てくれ。あと、背中貸してくれるとありがたい……」
一瞬彼女はキョトンとした顔をしたが、意味をすぐに理解したのか、そう言って薄く微笑みを浮かべた。
「……どうぞ、今なら無料レンタル中だ」
「……ありがとう……」
そう言うと彼女は立ち上がり、彼の背中を掴んで声を出して泣きだした。
まるですべての悲しみや憤りを吐き出すように……。
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