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では、「個体としての人」とは何か。
それは人間社会が築き上げられた時点でもう存在しないわけだが、仮定としての、つまり生物学でいうところのヒト、ホモ・サピエンスであるといえる。
しかし、ヒトという概念には何か無味乾燥としたものを感じないだろうか。
そのように感じるのは、人というものの世界観が、生物学という仮定的概念にすっぽりと収まってしまったせいで、一気に矮小化したためだろう。
そうやって、我々人間そのものが、そういった価値観の下落に身を置くと酷く違和感を感じるのは、我々が単なるホモ・サピエンス、つまりは「個体としての人」ではないと無意識的に自覚しているからではないだろうか。
我々は物心つく前からそういう意識を、収斂、消化していっているのかもしれない。
いや、もしかしたら、もう生まれた時点で消化しきっているのかも。
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