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川沿いの道を歩いていると、犬の散歩中のおばさんや、自転車に乗った高校生、お疲れ顔のサラリーマンなんかとすれ違う。
すると何故か、私もちゃんと社会の一部なんだ、もっとしっかりしないとって、そんな風に思えてくる。そんな気持ちが湧き始めるのが、ちょうど日没頃なのだ。
小さくなったタバコを携帯灰皿に押し込む。
まだ日は暮れていないけど、そろそろ引き返そうか。
そう思った時だった。目の前から走ってくる、ランニング中のジャージ男に目が留まった。
どんどん近づいてくる顔が、私のよく知っている顔にソックリだった。ハッキリ見えてくればくるほど、その人にしか見えなくなる。多少大人びてはいるものの、その顔はまるで――。
「……ケイタ?」
ジャージ男は目の前で止まって、汗を手で拭いながら笑った。
「あぁ、久しぶり」
およそ五年振りに聞くその声は、妙に懐かしくて、耳に心地良かった。
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