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その、女の私から見ても十分に可愛らしいその子の、真っ直ぐで真剣な眼差しを見て、私は理解した。
――あぁ、ケイタは好かれているんだ!
それはとても微笑ましいことで、幼い頃から苦楽を共にしてきた私としては、全面的に協力してあげたい。
私は本気でそう思った。
でもケイタとは今クラスが違うし、彼女とは友達でも何でもないし、そもそも自分自身受験を控えている大事なこの時期、私に出来ることなんてひとつしかなかった。
つまり、ケイタと離れること。
朝はわざと家を出る時間をずらして、放課後は常に友達と帰ることにした。廊下ですれ違っても挨拶だけで素通りし、辞書とかを借りに来ても他の子に頼んでと断った。
そうやって接触する機会を減らしていくと本当に接触することなんてなくなってしまうもので、夏休み明けにはスッカリ会うこともなくなっていた。
ケイタから何か言ってくるでもなく、だから私から何か説明するはずもなく、それはとても自然に、私たちの関係は挨拶程度の仲にまで薄まっていったのだ。
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