黎明ごよみ

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秋風が、山道の紅葉を優しく舞い上げる。 篤紀は、紅葉と共に舞いかけた自身のスカートの裾を、緩やかな動作で正した。 ふと、篤紀が一本の太い栗の木に視線をやると。 幼馴染の三門が、木の幹に凭れて寝息を立てていた。 静かな夕暮れだった。 かなり遠くで、老夫婦の話し声がこだまする。 三門に近寄った篤紀は、くすりと笑い声を漏らした。 三門は、まるで童子のような表情を浮かべていたのだ。 空手をしている時の厳しい表情を思うと、まるで別人のようであった。 三門の髪には、どこからか流れてきたのか、銀杏の葉がまるで飾り付けのように乗っていた。 紅の中の黄金。 その光景に一瞬見惚れた篤紀は、三門の銀杏に指先で触れた。 銀杏は、あまりにも儚げに、はらり、はらりと、まるで音がするかのように、地上へとこぼれ落ちていった。
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