0人が本棚に入れています
本棚に追加
秋風が、山道の紅葉を優しく舞い上げる。
篤紀は、紅葉と共に舞いかけた自身のスカートの裾を、緩やかな動作で正した。
ふと、篤紀が一本の太い栗の木に視線をやると。
幼馴染の三門が、木の幹に凭れて寝息を立てていた。
静かな夕暮れだった。
かなり遠くで、老夫婦の話し声がこだまする。
三門に近寄った篤紀は、くすりと笑い声を漏らした。
三門は、まるで童子のような表情を浮かべていたのだ。
空手をしている時の厳しい表情を思うと、まるで別人のようであった。
三門の髪には、どこからか流れてきたのか、銀杏の葉がまるで飾り付けのように乗っていた。
紅の中の黄金。
その光景に一瞬見惚れた篤紀は、三門の銀杏に指先で触れた。
銀杏は、あまりにも儚げに、はらり、はらりと、まるで音がするかのように、地上へとこぼれ落ちていった。
最初のコメントを投稿しよう!