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三門が凭れる木の脇には、大きな籠が置かれていた。
それを見て、篤紀は微笑んだ。
籠の中は――栗で一杯だった。
栗拾いに誘ったのは、篤紀の方だった。
夏に、一緒に観た花火――
あれから、二人の距離は明らかに変わった。
それまで二人は只の幼馴染、いや、それ以下だった。
二人は、少年、少女である時期を経て、これから少しずつ大人に近づく季節であった。
今年の、あの夏は・・・・
いや、これはまた別の話。
いまは秋に戻ろう。
篤紀は、いとおしげに、三門の肩を優しく揺すった。
「三門、三門、こんなところで寝ると、風邪、またひいちゃうよ」
「ん・・・・」
一瞬、歪んだ表情を浮かべた三門。
――三門は、ゆっくりと瞼を開いた。
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