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「篤、紀・・・・か」
まだ、寝ぼけているのだろうか。
篤紀は、にっこりと微笑むと、
「なあに、篤紀はここよ」
三門は、やっと目を見開くと、突然真顔になり、まるで何かを激しく求めるかのように、篤紀の頬に両の掌を伸ばすと、そのまま自身に引き寄せ――
強く――唇を重ねた。
篤紀は、一瞬気が動転した。
軽く動悸が走る。
しかし、唇が離れた篤紀から発せられたのは、
「・・・・三門、お熱、出てきた?」
散文的な台詞だった。
三門は、気分と雰囲気を壊されたせいか、
「・・・・出るかよ」
と、無愛想に呟き、軽く篤紀を睨んだ。
逆に余裕が出てきたのであろうか。
不機嫌そうな視線を三門に向けられても、篤紀はまったく動じることもなく、むしろ三門の子供っぽさが、微笑ましくすら感じた。
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