粉雪よ、消えないで

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夜の繁華街にある小さな居酒屋。 そこは小さいながらも繁盛していて、多くの客が訪れて結構騒がしい。 その一番奥にある座敷に二人の男女が座っていた。 「それにしても珍しいわね、アンタのほうから飲みに誘うなんて」 年の頃はだいたい25、6といったところか。 明らかに並以上の容姿を持つその女性は、なみなみとビールが注がれたジョッキを少し持ち上げて言った。 「そうかな?……まぁ、ちょっと……いろいろあってさ」 そう答えたのは、彼女と同い年くらいの青年。 彼も彼女にあわせるように、少しジョッキを持ち上げた。 「いろいろって……て、聞くだけ無駄よね。いつも答えないし」 彼女は微笑を浮かべて小さく溜め息をつく。 それに対し青年は、少し申し訳なさそうに「ごめん」と小さく言った。 「いいのよ、まぁ…ぱーっと飲みましょ♪かんぱーいっ!」 「かんぱーい!」
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