粉雪よ、消えないで

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廊下で教室の反対側を向いていた俺は、窓の外に雪が降っているのに気がついた。 「もうそんな時期なんだよなぁ~」 受験がどうこうではない。 このまま行くと雪との間になんの進展も無いまま卒業を迎えてしまう。 俺はこの高校の近くに住んでいて、雪は毎日電車で登下校しているから、家は相当遠い。 それにお互い進学してしまえば、滅多に会うこともないだろう。 もうすぐ冬休みが訪れようとしている。 今年こそは………絶対に。 そんな事を考えていると、あっという間に時間が過ぎて、気付けば放課後だった。 毎日の日課のように、俺は雪を駅まで送っていく。 「今日は災難だったね~」 「あぁ、ホントに。あの数学教師(名無し)、次に会ったらただじゃ置かん」 そんな他愛のない会話をしながら、俺と雪は駅までの道を歩いていた。 「それにしても、明後日からはもう冬休みなんだよね~」 「そうだな、もうすぐ卒業するんだよな。俺達」 俺のその言葉に、雪の表情は暗くなった。 ……まずったかな。 「そうだよ……、卒業」 小さく呟くように雪は言う。 言ったと思ったら、今度はいつもの雪の顔に戻り… 「ねぇ、真樹は……今度の冬休みでしておきたい事って…ある?」 唐突な質問だった。 俺の胸中をもう全て知っているかのような質問。 ………言ってしまおうか。 「そうだな………」 雪の頬はほのかに赤い。 それが寒さのせいか、もしくはもっと別のモノによるのかはわからない。 だが、今俺自身は後者のほうで頬を染めていることだろう。 「俺は……」 言ってしまおう。 そうする事で、肩の荷が降りるか、もしくは彼女が共に荷を背負ってくれる人になるかはわからない。 けど、言ってしまおう。 「俺は………」 この先に俺が何を言うのか感じとったのか、雪の目は真っ直ぐに俺を見つめて……頬ははっきりわかるほどに赤い。 「真樹………?」
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