粉雪よ、消えないで

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「……俺、雪のことが――」 「ストォーーップ!」 突如、俺の言葉は雪によって遮られた。 な、何故に? 「ゆ、雪……?」 「ま、真樹が何を言おうとしてるのかわかるけど……そ、そのぉ」 フラれた。 俺はそう思った。 「その……あと少しだけ、待ってくれないかな。冬休みに入って、その、あの、あの……ね?」 もじもじと恥ずかしそうに彼女は言う。 その様子に、フラれたのではない。とは想ったが………… 冬休みでなければならない理由なんて―― 「あ………!」 クリスマスイブに。彼女はそう言いたいのだろうか。 まぁ確かに”イブの夜に告白して”なんて、恥ずかしくてとてもじゃないが言えないだろう。 恋愛の話に疎い俺でも聞いた事くらいある。 ”イブの夜に結ばれたカップルは、永遠に幸せになれる” 何の根拠があってそんな都市伝説まがいの事を言っているのかはわからないが。 「あぁ、わかった。それまで胸の内にしまっとくよ」 「うん、私も……最高の返事考えておくから」 『二番の乗り場に列車が参ります。白線の内側へお下がりください』 そう話している間に電車は到着した。 『二番乗り場、浅野行きに乗られるお客様は、お乗り遅れの無いように…』 「おっと、行っちまうな。・・・じゃあ、また明日な」 「うん、バイバイ」 照れを含んだ彼女のはにかみ笑いは、俺の脳裏にくっきりと焼き付いたのだった。 その後の帰り道、俺のテンションは最高潮だった。 何せ、ずっと好きだった女の子からほぼOKに等しい返事が貰えたのだから。 「それにしても随分雪が降ってるな」 まるで空が俺を祝ってくれていているみたいだ。 今までにないようなハイテンションで帰宅し親に不審がられたが、そんな事は気にもとめず、飯、風呂など一通り済ませた俺はすぐに眠りについた。
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