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楓は金網の向こうの景色を眺め、僕はその後ろ姿を無意識に見つめる。
今にも飛び降り、目の前から消えていなくなってしまいそうで恐かった。
と、案の定その瞬間、辺り一帯に激しいほどの風が吹き付ける。
神様が現れたような……不思議なほど心にくる冷たい風。
楓は風に揺れる長い髪を押さえながら、優しく目を細める。
「ねぇ、最後だからさ。笑顔で終わらせようよ」
「……わかった」
嫌だ……と、言おうとした言葉を僕は必死に堪え、呼吸を整えて心が落ち着いた所で、やっと真っ直ぐ前を向く。
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