🌃世界一の美女🌃

煙草を吸うハイエナ

「あぁ。」ジョニーは僕を見ずに頷く。
「死因はレミュランだそうだ。少量のレミュランを白ワインと一緒に飲んであの世逝き…。」

「なんてこった。」
僕は正直どこかで彼女が生きていると思っていた。
だからいつか必ず、ジョニーの元へ戻ってくるという淡い期待を抱いていた…。

「綺麗だったよ、棺に収まったフランス人形みたいにさ。」

「……。」もう僕にはかける言葉が思い浮かばない。

「死体にキスでもすりゃ良かった、でもそれが初めての彼女とのキスになるのは、彼女としても嫌だと思うから、俺は自分の吸うタバコを彼女にくわえさせたんだ。」
港から見える海の景色は、薄暗さから白の強い灰色に変わりつつあった。
日が昇ろうとしているのだ。

「彼女が俺のタバコをくわえ棺の中で焼かれていく、そんな光景を目の当たりにしてから、俺はタバコをくわえる度に彼女を思い出し、一緒に同じものを吸うという共通認識を味わうことができるようになった。」

「それじゃ今も？」

「もちろんさ。一つ質問していいか？。」

僕は頷く。

ジョニーはタバコの煙りを吐いた後に聞いた。

「どうしてあの時電話に出なかったんだ？」

港の堤防にはゆるやかな波が何度もうちのけ、朝日はうっすらと夜の空を紫にし、カモメの小さな鳴き声が響きだす。
ゆるやかでまどろみある時間帯が訪れようとしている。

僕はジョニーに対し必然的こう答える。
「お前のタバコの味を消す為だよ。」

ジョニーは首を傾げる。

「僕も質問していいかな？」

ジョニーは"どうぞ"と手のひらを僕に向ける。

「死にたいと思うかい？」

ジョニーはその質問に対し首を横に振り「いいや、生き抜いてやる。彼女のぶんもな。」と即答する。

朝一番の光りは無条件に彼を優しく包んだ。

その光景はまるで、光りが彼を抱き締めているような光景だった。

これから彼女は彼の中で生きるのだ。

タバコをくわえた彼の中で…。