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「ところで王様、少しばかりお時間を頂いても宜しいでしょうか?」上機嫌で葉煙草をふかす王様に、キツネは声をかけた。
「うむ、なんだ?」
王様は隣にいたヒョウを下がらせようとしたが、キツネは掌を見せてそのままで大丈夫だということ告げる。
「はい。先日ウサギからホッペンケルケの件について話を聞きました。ウサギのことなのですが、どうにも『びびって』しまったようで。どうしようどうしようと、頼りのないことこの上ない。」
「ふむ、どこまでも使えぬ男だ。毒でも流せばいいだけの話ではないか。」少しだけ声を荒げながら王様は鼻をならす。
「はい、まさにその通りです。ですが王様、ただ毒を流すだけではおもしろみがありません。それでは国民に、虐殺と勘違いされてしまいます。」
「む、それはいかんな。」これは虐殺ではない、追放なんかでもない、ただ単純に、この国を掃除するだけだ。はたかれて落ちるホコリと同じだ。
「はい、王様の信用を欠かすわけにはいきません。そこで、私、少しばかり考えがあるのですが…」
そろりそろりと玉座へと近づき、王様に耳打ちをする。
近づく度に、鼻のまがるようなにおいがする、煙草のせいだろう。タバネ草の葉を長い間熟成させ刻んだものだ。この国でこんなに『品のある』くさい煙草を吸っているのはこのライオンくらいだろう。キツネはそう思った。
「なるほど。」
キツネが話しおえると、王様はまた煙草をくちにくわえ込み大きくぷかり。また煙はヒョウにあたるが、彼は表情を一切かえない。まるで、この場にいないもののように見える。
「それは面白い。」
ふふ、と笑うと王様はキツネにまた長い休暇を与えた。
「ウサギにも少し休暇を与えてやれ。」ヒョウにそう言伝てする。
「思えば、少し働かせすぎたかもしれん。」そう呟いて王様は寝室へと戻ると、侍らせておいた若いトラの娘たちと『楽しく』『にぎやかな』夜を過ごした。
そのとき、ヒョウは人知れず思っていた。ウサギへの休暇は、優しさからではない。ただ、この王は、キツネの持ち出した計画に興味が向かっただけなのだと。
フクロウのじいさんは、ながくながくあくびをしたあと今日という一日を感謝してゆっくりと眠りについた。
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