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ウサギは支度をしていた。
今朝、王様から今回の件はキツネにすべて任せる事になったと、そしてウサギにはしばらく休暇を与えてくださると通達があったからだ。
この久しぶりの休みを何に使うか、ウサギは決めていた。
ホッペンケルケのカエル達に会いにゆく、そう決めていた。
キツネなら、きっと誰もが納得をし、誰も傷つかない方法を考えてくれると信じていた。
信じていたからこそ、ウサギは彼らに会いにいかねばならない。
どちらにせよ、この機会を逃せばもう彼らには二度と会う事もないからだ。それをウサギは知っていた。
「よし、これくらいでいいだろう。」三日分ほどの衣服と、煙草を二箱。それと前に頼まれていたオリーブオイルとツツジの蜂蜜。
それらをツチブタの背鞍にくくり付けると、ウサギは悠々と出発した。
懐中時計は午後を示している。
たぶんホッペンケルケに着く頃には太陽も沈んでいるだろう、途中でランプを買わなければ。
ツチブタの背で揺られながら、ウサギは笑顔でいた。
着いたら、まずは一番仲の良いカエルの家に行き「このあいだの青フナはいつもより美味しかった」と礼を言おう。
きっとその後彼らは私のために宴会を開くだろう。たくさんの料理に、若いおたまじゃくし達のダンス。
きっと町一番の美人と言われるあの子は、収穫の歌をまた歌ってくれる。
ウサギは笑顔でいた。
ちょうど空が赤みがかって来た頃、ランプの準備をした。
少々値が張ってしまったが、それでもウサギは笑顔であった。
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