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「やあやあやあ!よく来てくれたね!疲れただろう?」私のランプに照らされながら、青いカエルが言った。
「なに、このくらいどうってことないさ。」荷物を下ろし、ツチブタを小屋に入れる。この小屋というのも、カエル達が私のために作ってくれたものだ。私がいつ来てもいいように、毎日藁を変えてくれているらしい。おかげでツチブタは嫌がる事もなく小屋に入ってくれる。
「そうだ、遅くなってしまったけれど…。」荷物の中からオリーブオイルと蜂蜜を取り出し、カエルに渡した。
「ああ!わざわざ済まないなあ」言いながら彼は蜂蜜の瓶をあけて、ぺろりと舐める。
「うん!やっぱり君が持ってきてくれる蜂蜜が一番美味しいよ!たまにモグラが行商に来るのだけど、ヤツのとこの蜂蜜といったらもう、味がてんで駄目さ!香りも全然ない、やっぱりヤツの目は節穴さ!」げろげろと笑いながら、彼は言った。
細い目をうんと細めながら、笑っていた。
私は、ほっとしていた。
「さて、一先ず風呂でも入るといい!こんな寒いところに来て、きっと手が霜焼けになってるんじゃないかい?」
彼の言う通り、私の手は真っ赤になっていた。
手袋を忘れたのが失敗だった、と少しだけ後悔しつつもカエルの優しさにまた胸がほっとした。
「荷物は僕の家に運んでおくから、さあ、温まっておいで!」
じゃあ行ってくるよ、と私は手を振り町の中心にある大浴場へと向かった。
この町では一年中雪が降っている、だが彼らがきちんと生きてゆけるのはこの温泉があるからだろう。
私は、本当にこの町が好きだ。
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