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風呂から上がると、もう宴会の準備が出来ていた。
きっと彼らはいつでも宴会が出来るように、準備をしているのだろう。
事実、彼らの振る舞ってくれる料理は保存性が高いものだかりだ。
だが、きちんと美味しさもあるところが彼らの素晴らしい才能だろう。
一人のおたまじゃくしが私に近づいてきた。
「ねえねえ、オリバーおじさん。お城では毎日舞踏会が開かれているって本当?」目を輝かせながら、彼女は言った。
オリバーと、久しぶりに名前を呼ばれた私は彼女の目線に合わせるために、しゃがんだ。
「毎日ということはないよ、本当ならおじさんも毎日したいけれどね。」
苦笑をしたあと、私は彼女の頭をなでる。彼女はやっと足が生えたばかりのまだまだ子供でそれでもしっかりと、揺れる身体を両足で支えていた。
「ところでジャン、ムウロ婆さんはどこだい?先ほどから姿が見つけられないのだけど。」
私は彼をジャンと呼ぶと、この町で一番の高齢のムウロ婆さんについて尋ねた。
「ああ…婆さんは一ヶ月ほど前に、ね。」
顔をほんの少しだけ曇らせながら、ジャンは答えた。笑ってはいるが、無理をしているに違いない。
「そうか…逝ってしまったか…。」
「ああ、あの煩い婆さんがいないと町もちょっとだけ寂しいよ。」
頭を掻きながら、ジャンはいう。
「でもねでもね!仕方ないんだよ、おばあちゃんいつも言ってたもん。いのちっていうのは初めから神様がみんなに平等に与えているものだから、いつか死んでしまうのは仕方ないことなんだって。きちんと自分の死を受け入れたら、また生まれかわれるんだって!」
彼女が、真剣な顔して話している間、私はなぜか心が痛くなった。いや、痛ませたのは自分かもしれない。
すまない、私はそう言い残すと宴会の輪から外れた。
「なにかあったのかい?」
私が、火を探している時に彼がそっとマッチを差し出してくれた。
私はそれを借りて、煙草に火をつける。ちりちりと赤い蛍が生まれる。
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