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次に玉スイカが実る頃、それまでに私はあのホッペンケルケのやさしきカエルたちを殺さなければならない。
奴らは本当に気さくで心優しい。毎年、名物の青フナをわざわざダチョウ宅配便を使って新鮮なものを私の家に送ってくれる。私が、青フナのムニエルが好きだという事を知っているのだ。干物ではムニエルにできない。
青フナと一緒に、手紙も毎回添えられている。その手紙には、きれいな雪の結晶が何枚も何枚も入っており、私はそれを眺めながらアールグレイの熱い紅茶を飲むのが好きなのだ。
そのちょっとした楽しみをくれる彼らの事も私は大好きなのだ。
確かに彼らの身体はどぶのようなにおいがするし、彼らの身体はあのオクラのようにねばねばしている。
だが、それは彼らが悪いわけではないのだ。
彼らはそういう体質なのだ。どうにもできない運命なのだ。
私たち生きているものは、完璧などではない。
私だって季節の変わり目にはたくさんの毛が抜けるし、みずあびをした後なんて麦を引いたあとのあの堪らないむずかゆい匂いがしたりする。
王様に至っては、いつだって葉煙草の嫌な匂いをさせているし、たまによだれがダラダラと出っぱなしな事もある。なのに何故、彼らだけを忌み嫌うのだろうか。私にはそれが理解できない。
吸い慣れない煙草に火をつける。
手の震えが収まらない。ぷるぷると、私は煙草を口に運んだ。
肺を大きく広げ、煙を身体いっぱいに吸い込む。
やはり、このようなシコウ品は私には合わないようだ。毒素をすべて吐き出す。
私に殺れるだろうか、あの心優しいホッペンケルケの奴らを私は殺れるのだろうか。
いや、殺らなければならない。
どんな手を使ってでも、次の玉スイカが実る九月までに。
王様は馬鹿だ。能なしだ。
しかし、自分に従わぬものを消してしまう事に関しては、なぜだが神がかり的な才能を発揮する。
殺らなければ、私が危ない。
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