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ウサギは悩んだ。
やはり彼らを殺すしかないのだろうか。
ウサギはうなだれた。
「なにかあったのかい、ウサギ、僕で良ければ力になるよ。」
キツネは椅子から立ち、心配そうにウサギの顔を覗き込んでいる。
「聞いてくれるかい、キツネ。私はもう、どうしていいやらわからないのだ。」
ウサギはまた、煙草を胸ポケットから取り出す。その時に首から下げた懐中時計がちかりと光り、キツネは少しだけまぶしかった。
王様からの電話のこと、ホッペンケルケの友人の事、青フナのムニエルがとてもおいしい事、雪の結晶を見ながら紅茶を飲む話、むせながら、ウサギはキツネに一つずつ丁寧に説明をした。その最中にも時計はちかりちかりと光るのだが、その光り方はどうにも気持ちの悪いもので、金のメッキを今すぐにでも矧がしてやりたい衝動にかられたが、キツネはまっすぐにウサギの目を見て、話を聞いた。
「なるほど、そいつは難しい話だね。」すべてを話終えたとき、辺りはとても真っ暗になっていてロウソクを二本使ってもまったく明るくならなかった。
このままでいいよ、キツネが気を使いそう言うと、ウサギは内心ほっとしてキツネの次の言葉を待っていた。
「僕はホッペンケルケの奴らの事はあまり好きじゃない。」暗闇で、じらじらとキツネの目が揺れる。
「だけれどね。」キツネの一言一言を吸収しながら、ウサギは相槌を打っている。
キツネなら、自分には思いもつかないようなとてつもないアイデアを産み出すような気がしていたからだ。
「僕は君の事をとても気にいっている、だから、君に協力をするよ。この件はちょっと僕に任せてくれないかい?」
ウサギが胸に手をあてると、心臓がとんでもない速さで動いている事に気付いた。自分の息がいつもより荒い事がわかる。
「ああ、君に任せるよ。キツネ、ありがとう。」
どういたしまして、暗闇からの返事はウサギにひどい安堵をもたらした。
その後二人は、今度の王国祭について少しばかり話しをして別れた。
フクロウのじいさんが、じっと見つめていた。生暖かい夜だった。
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