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大事なところで言葉付きを狂わされるかと思えば、彼の言葉は俺の言いたかったことを代弁しただけで。
俺は「うん、」と僅かな声を漏らすように言いながら小さく頷いた。
「それで、理由はそれだけ?」
―――――…それだけ?
まだ何かいるというのだろうか。
“恋人”なんて、おおっぴらには言えなくても、お互いがお互いに自然にそういう関係だと思い、接していた2人。
互いの、或いはどちらか片一方の気持ちが離れてしまったというのに、何が、不満だというのか。
俺は黙ったまま、片肘をつき、むっくと起き上がる。
「………」
「………」
互いに沈黙のまま少し顔を見つめられ、逃れたい衝動に駆られた。が、その心中を読まれたのかと思うほどに途端に動き、1,2歩こちら側に近づかれた。
そしてふと彼がベッドに片足を乗せ、その膝を折るように踏み込むと、今度は手が伸ばされ思わずびくりとして反射的に薄く目をつむってしまった。
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