244人が本棚に入れています
本棚に追加
一昨日もあの子は来てくれた。
昨日もあの子は来てくれた。
そして今日もあの子は私に逢いに来てくれる。
「こんにちは。たんぽぽさん」
「こんにちは。今日も来てくれたのね?」
男の子の姿を見つけてたんぽぽは嬉しくなった。
「うん!今日はね、たんぽぽさんにお水を持って来たんだよ?」
「私のためにありがとう。
ここのところ雨が降らないからお水が欲しかったの。」
「あれ?」
「どうしたの?」
「お水がこれしかない…」
バケツにはほとんど水が入ってなかった。
バケツの縁が擦れてる。
引きずりながら持ってきたせいで水が零れてしまったらしい。
「頑張って持って来たのに…」
男の子の瞳から大粒の涙が零れた。
「泣かないで泣かないで…大丈夫。
私の花びらを一枚抜いて」
「うん」
プチリと黄色い花びらを一枚抜いた。
「抜いた花びらをバケツの水に浮かべてバケツに手をかざして強く願って。
水が沢山湧き出ますようにって」
「うん」
バケツに残る水の中に抜いた花びらを浮かべた。
そして両手をバケツにかざして強く祈る。
「どうかお水がいっぱいいっぱい湧き出ますように」
ユラリと水面が動いた。
水面から眩いばかりの金色の光が溢れる。
「うわぁぁ…綺麗…」
金色の光は徐々に輝きを失いバケツから金色の水がチョロチョロと流れ出した。
「あ!!水!!」
「その水は永遠に枯れる事なく湧き出るでしょう。」
「本当に?」
「えぇ。その水を私にかけてくれる?」
「うん!!」
サラサラとたんぽぽに金色の水がかけられる。
「きもちいい…とってもきもちいいわ」
「よかったぁー!!
でもまた僕のせいで花びら少なくなっちゃったね?」
シュン…と落ち込む男の子を見てたんぽぽは微笑む。
「ふふ。大丈夫よ?
花びらはまだ沢山あるし、お水が欲しかったから私が自分のために使ったんだもの。」
それでも男の子はシュン…としたまま顔を上げない。
「貴方のせいじゃないわ。
だからそんな顔しないで?」
「うん」
たんぽぽは嬉しかった。
こうやって話しが出来て誰かと心を通わせる事が出来る今を幸せに思った。
いつまでもこの幸せな日々が続けばいいのに。
そう心の中で強く願った。
最初のコメントを投稿しよう!