ひとすじ

好き…かも

教室に戻ってくるとまだ痒さの残る手をかきむしる。すると荻原が瑞希の席までくると鞄を持つ。

「かじってばかりいないで帰るよ」

そう言って先に歩きだす荻原を追い掛けた。他愛のない会話が切れることなく続く。
楽しくて時間を忘れるくらいだった。土地勘のない瑞希をからかうようにして歩く荻原にいつしか心奪われて行く。
ほんの些細な優しさだった。それでも嬉しかったんだ。
荻原の笑顔が嫌なこと忘れさせてくれるかのようにやさしくて急速に動く心臓の意味がやっと理解出来たんだ。

私…荻原が好きなんだ。