ぷろろ~ぐ

10/13
前へ
/285ページ
次へ
はじめは驚いて、許してもらおうと考えていたのだが…… 少年は心のどこかでホッとしている自分に気づいた。 これで家から……いや、父親から離れることができる。 そう思うと、気持ちがいくらか楽になった。 少年は父親に頭を下げた。 「わかりました、父様……いいえ、イザナス様。僕は家を出ます」 その言葉に、 「――お兄ちゃん!?」 妹は驚いて兄を見、出口にむかっていた父親は足を止めた。 振り返らない。 「僕は家を出ます」 少年はもう一度言った。 今度は怯えた表情ではなく、まっすぐ父親の背中を見つめて。 「お世話になりました。こともないけど。今日――今から僕はこの家と……一族と縁を切ります」 「ほほぅ。『ラグナス』の姓を捨て、生きていくというのか」 父親の言葉に少年ははっきりと頷いた。
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25890人が本棚に入れています
本棚に追加