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はじめは驚いて、許してもらおうと考えていたのだが……
少年は心のどこかでホッとしている自分に気づいた。
これで家から……いや、父親から離れることができる。
そう思うと、気持ちがいくらか楽になった。
少年は父親に頭を下げた。
「わかりました、父様……いいえ、イザナス様。僕は家を出ます」
その言葉に、
「――お兄ちゃん!?」
妹は驚いて兄を見、出口にむかっていた父親は足を止めた。
振り返らない。
「僕は家を出ます」
少年はもう一度言った。
今度は怯えた表情ではなく、まっすぐ父親の背中を見つめて。
「お世話になりました。こともないけど。今日――今から僕はこの家と……一族と縁を切ります」
「ほほぅ。『ラグナス』の姓を捨て、生きていくというのか」
父親の言葉に少年ははっきりと頷いた。
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