25887人が本棚に入れています
本棚に追加
/285ページ
イザナにしてはめずらしくやる気の表情になっている。
だが。
「……ドブ……ネズミ……」
アーシャの呟きが、聞こえた。
イザナはまずいと思った。
アーシャの理性がプツン……と途切れたのに気づいたのだ。
「アーシャ!やめ……」
イザナの声を遮るように、下水道が振動した!
そしてイザナの目の前に出現する巨大な火の玉。
それが溝の水を一瞬で蒸発させた。水蒸気がまきあがる。
ゴゴッ……と低い唸りをあげ、火の玉は宙を進み、巨大ドブチューと激突する!
巨大ドブチューはあっさりと飲み込まれ、天井を突き破り、いくつもの火の柱がたちのぼった!
「――やりすぎだ!」
イザナは鋭く叱咤すると、べちんと白狐の頭を叩いた。
「う゛ぅ゛ぅ゛…………」
アーシャは低いうなりを発している。
目が淡いルビー色から、灼色(しゃく)に。
全身の毛が逆立ち、白から……金色に。
アーシャは唸り続ける。
ただ巨大ドブチューの出現に驚いた―というわけではない。
紫色の光沢を放つリングに反応したのだ!
さきほど具現した火の玉によって【リング】は壊れたかもしれないが、アーシャの興奮はなかなかしずまらなかった。
王都のこんな騒動をおこしたのだ。
城つとめの【正紋章魔術師】が動くことになるばず。
はやいことトンズラするべきか――。
イザナがそう思っていると、
「なんなんですか、この煙は?それに、大きな爆発は?」
水蒸気たちこめる煙の中から、声が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!